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2010年4月24日

韓国の行政訴訟

群山発電所建設取り消し訴訟、原告が敗訴」(Chosun Onlineより)

韓国の全羅北道(チョルラプクド)群山(クンサン)に建設されている火力発電所の建設認可差し止めを求める裁判で、ソウル行政裁判所は原告敗訴の判決を下したというニュース。

記事の限られた情報からですが、日本の行政訴訟と比較するといろいろ興味深い。

韓国の行政訴訟法(韓国Web六法へのリンク)は、おそらく日本の行政事件訴訟法を参考にして作られたと思われ、規定ぶりが割と似ています。例えば、韓国の行政訴訟法3条は、行政訴訟として抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟を用意していますが、この規定は日本の行政事件訴訟法2条とほぼ同じです。

そして、抗告訴訟については取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為違法確認訴訟の3類型があるのも(行政訴訟法4条)、2004年改正前の日本の行政事件訴訟法と共通です。

尤も、韓国では行政事件は行政裁判所(行政法院)という専門の裁判所が設けられているのが日本との比較では大きく違います[法院組織法40条の4(韓国Web六法へのリンク)]。

本件は、抗告訴訟の中でも取消訴訟ですが、記事では、「大田地域の環境運動家13人に対しては、「工事と関連して利益の侵害を受ける立場にない」として、原告としての資格を認めなかった」とあります。行政訴訟法12条が、取消訴訟の原告適格につき「処分等の取消を求める法律上利益がある者が提起することができる」としていることから、群山から離れた大田(テジョン)の住民には原告適格がないという判断になったのでしょうか。

また、記事では「判決理由について裁判長は、「発電所建設を推進する中で、環境影響評価の対象地域である舒川郡住民の意見がまったく取り入れられなかったため、手続き上問題があったことは認められる。しかし認可が取り消されてしまうと、安定した電力の供給に問題が生じるなど、社会的に大きな損失が予想される」などと説明した」とあります。ここを読むと、どうも事情判決っぽい雰囲気があるなと思いますが、行政訴訟法28条1項には、「原告の請求に理由があると認める場合においても、処分等を取り消すことが顕著に公共福利に適さないと認めるときは、裁判所は、原告の請求を棄却することができる。この場合、裁判所は、その判決の主文でその処分等が違法であることを明示しなければならない」と事情判決の規定があります。尤も、ここの判断は環境影響評価の手続に問題があったけど処分を違法ならしめないという趣旨かもしれませんから、よくわかりません。

あと、本件訴訟はいわゆる自然の権利訴訟で、原告として「クロミヤコドリ」という鳥が名を連ねていたようですが、裁判所は「原告としての能力がない」としたとのこと。韓国でも自然の権利訴訟は認められていないということですな。

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