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2010年6月18日

居住利益

居住による減額認めず=欠陥住宅賠償訴訟―販売業者の敗訴確定・最高裁

判決文(最高裁サイトへのリンク。PDF)

建て売り住宅に建て替えざるを得ないような重大な欠陥があり、建て替え費用相当額の損害賠償責任が発生する場合、賠償額から建て替えまでの居住利益や耐用年数の伸長した建物を入手できる利益を損益相殺として控除できるかという点について、最高裁は否定。

本件を考える上でまず参考になると思われるのが、建物建築の請負契約において、建て替え費用相当額の損害賠償を認めるのは民法635条ただし書きの趣旨に反しないとした判例[最判2002(H14).09.24]。


民法634条(請負人の担保責任)
1 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。

民法635条
 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。


民法635条ただし書きが、建物その他土地工作物の請負契約においては瑕疵のため目的が達することができない場合であっても解除を認めないのは、建物などの土地工作物は社会経済的な有用性が大きいので、瑕疵によって注文者の目的が達することができないとしても何らかの使い道があるはずであり、解除により取り壊すのは社会経済的に損失だ、という、いわば「MOTTAINAI」という発想によっているわけですが、建て替えざるを得ないほど瑕疵がある建物は何らの使い道もなく、社会経済的有用性がないため取り壊しても「MOTTAINAI」ことにはならない、というのが上記2002年最判の理由かと思います。


そのことを前提とすれば、建て売りにせよ注文住宅にせよ、建て替えざるを得ない、社会経済的有用性のないボロ屋に住まうことは利益とはいえないし、耐用年数が先送りになったことも利益とはいえない、ということになりそうです。

ま、本当のところは損益相殺を肯定すると、ごねた業者ほど賠償額が減少することになるので、そういった業者側のごね得を許さないという、現実的な利益衡量がまずあって、それを正当化するために理屈をつけたという感じなのでしょうが(宮川判事の補足意見がそのことを窺わせます)。

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