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2009年5月22日

器物損壊? 自然公園法違反?

西海国立公園・九十九島の岩に落書き...環境省「被害届も」」(ヤフーニュースより)

国立公園内の自然の岩に落書きした人がいて、関係者が立腹しているという話。まったくけしからん行為であることは疑いないのですが、記事中で「環境省は、器物損壊と自然公園法違反の疑いがあるとみて」いるとあるのに引っかかりを覚えてしまいました。

第一に、器物損壊について。

まず、本件岩が器物損壊罪の客体たる「物」にあたるでしょうか。この点、岩は土地の一部として不動産の構成部分だから、一応器物損壊の客体たる「物」には該当するのかな。ここは問題ないということにしておきましょう。

参照裁判例:「田に生育したれんげ草」を器物損壊の客体として認めた東京高判1956(S31).11.22

次に、物に落書きする行為は物の効用を害する行為といいうるので、本件岩に落書きする行為も器物損壊といってよいでしょう。

参照裁判例:コンクリート塀にスプレー式ペンキで落書きした行為が、器物損壊罪に当たるとされた福岡高判1981(S56).03.26


ただ、環境省つまり国が親告罪である器物損壊で「被害届」を出すためには、前提として当該岩が国有地内になければならないのではないでしょうか。
アメリカのナショナルパークは営造物公園というやつで、国立公園内は全部国有地なんですが、日本の自然公園はいわゆるゾーニング制公園というやつで、自然公園は地域を定めているに過ぎず、エリア内に民有地があることもありえます。仮に当該岩が民有地にあるならば、被害届は地権者が出すことになろうかと。

この点、被害届は「犯罪の被害に遭ったと考える者が、被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出」にすぎず、被害届提出権者は告訴権者と同列に論じなくてもいいのかもしれませんが、所有者でもない者が「被害・・・・を申告」するというのは違和感があります。

当該岩は、国有地内にあるのでしょうかね。


第二に、自然公園法違反の点について。

本件地区は自然公園法上の特別地域(自然公園法13条)にあると思われるのですが(エリア図参照)、落書き行為が自然公園法13条3項各号の列挙事由のどれに当たるのかが、よくわかりませんね。


自然公園法13条3項
 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、当該特別地域が指定され、若しくはその区域が拡張された際既に着手していた行為(第五号に掲げる行為を除く。)若しくは同号に規定する湖沼若しくは湿原が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為若しくは第七号に規定する物が指定された際既に着手していた同号に掲げる行為又は非常災害のために必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。
一  工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
二  木竹を伐採すること。
三  鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
四  河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
五  環境大臣が指定する湖沼又は湿原及びこれらの周辺一キロメートルの区域内において当該湖沼若しくは湿原又はこれらに流水が流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
六  広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
七  屋外において土石その他の環境大臣が指定する物を集積し、又は貯蔵すること。
八  水面を埋め立て、又は干拓すること。
九  土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。
十  高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。
十一  山岳に生息する動物その他の動物で環境大臣が指定するもの(以下この号において「指定動物」という。)を捕獲し、若しくは殺傷し、又は指定動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
十二  屋根、壁面、塀、橋、鉄塔、送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。
十三  湿原その他これに類する地域のうち環境大臣が指定する区域内へ当該区域ごとに指定する期間内に立ち入ること。
十四  道路、広場、田、畑、牧場及び宅地以外の地域のうち環境大臣が指定する区域内において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
十五  前各号に掲げるもののほか、特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの

そのへん、環境省はどう考えているのでしょうかね。


この記事を書いていて気付きましたが、TKCローライブラリで、「東京高等裁判所(刑事)判決時報」のPDFが見れるようになっていたのに驚き。
法科大学院在学中に刑事訴訟法のレポートか何かの関係で、捜査機関が隠しマイクによる盗聴(バッギング)を行ったことが問題となった日本共産党十日町事件[東京高決1953(S28).07.14]の決定文が調べたくて法学部の資料室に調べに行ったのですが、当時法学部が耐震工事中で、当該決定の掲載された「東京高等裁判所(刑事)判決時報」は図書館の地下の奥の奥に段ボールで仮置きされていたんだよな。
その経験から、「東京高等裁判所(刑事)判決時報」は見つけにくい資料というイメージがあったのですが、PDF化されているのか。

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