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2010年4月28日

これはセーフかな?

<奈良地裁>検察官不在のまま判決言い渡す 再度言い渡しに」(ヤフーニュースより)

刑事事件の判決公判で検察官が出席していなかったことを看過して裁判官が判決を言い渡し、直後に気付いて慌てて検察官を呼びだして再度言い渡したという話。


刑事訴訟法

342条 判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。
282条2項 公判廷は、裁判官及び裁判所書記が列席し、且つ検察官が出席してこれを開く。


記事によると、午前11時50分に始まった公判で、裁判官が有罪判決を被告人に言い渡したが、閉廷直前に「検察官は来てなかったの?」と気付き、書記官が電話で呼び出した。約5分後、検察官が何度も頭を下げながら入廷。裁判官は「もう一度、改めて宣告をやり直します」と前置きして判決主文を読み直した、とのこと。


平成19年の重要判例解説に似た事件が載っています[最決2007(H19).06.19]。

重判登載の事件では、今回のニュースと同じように検察官の不在を看過して判決を言い渡したのですが、さらに、そのことに気付かないまま裁判官も被告人も退廷してしまい、被告人が裁判所から勾留先の刑務所に出発してしまった段階で書記官が検察官がいなかったことに気付いて裁判官に伝え、裁判官は慌てて検察官を呼び出すと共に被告人を刑務所から裁判所に呼び戻し、みんな揃ったところで改めて判決を宣告したという事実関係になっております。これについて最高裁は被告人が法廷外に出た段階で公判期日は(違法なまま)終了しており、改めて判決を宣告したのは事実上の措置に過ぎず法的な効果を有しない旨判示しています。

この判例との対比ですと、今回は被告人も裁判官も在廷している状態で裁判官が検察官の不在に気付き、検察官を呼びだして判決の宣告をやり直していますから、一応セーフということになりそうですね。

検察官は別の仕事に追われていてうっかり忘れてしまっていたようですが、気を付けないといけないですよね。

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